2015年2月1日日曜日

高齢中大脳動脈領域脳梗塞(malignant MCA infarction)に対する外減圧術

Hemicraniectomy in older patients with extensive middle-cerebral-artery stroke.

Jüttler E, Unterberg A, Woitzik J, Bösel J, Amiri H, Sakowitz OW, Gondan M, Schiller P, Limprecht R, Luntz S, Schneider H, Pinzer T, Hobohm C, Meixensberger J, Hacke W; DESTINY II Investigators.
N Engl J Med. 2014 Mar 20;370(12):1091-100. doi: 10.1056/NEJMoa1311367.

60歳以下の大きな片側大脳半球脳梗塞に対する外減圧の有効性は過去に示されていますが、このドイツ発のstudyは61歳以上(平均70歳、61~82歳)112人での検討です。

一次評価項目は6ヶ月後の重度障害のない生存(mRS 0-4)。

重度障害のない生存者は外減圧群で38%、対照群で18%(OR 2.91, 95%CI 1.06-7.49, P=0.04)でした。外減圧群の死亡は33%、対照群は70%でしたが、自立できるようになった人(mRS 0-2)はいませんでした。

6ヶ月後・12ヶ月後のmRS



2群の生存曲線

脳卒中における予防的抗菌薬投与は予後を改善しない

The Preventive Antibiotics in Stroke Study (PASS): a pragmatic randomised open-label masked endpoint clinical trial.

Westendorp WF, Vermeij JD, Zock E, Hooijenga IJ, Kruyt ND, Bosboom HJ, Kwa VI, Weisfelt M, Remmers MJ, Ten Houten R, Schreuder AH, Vermeer SE, van Dijk EJ, Dippel DW, Dijkgraaf MG, Spanjaard L, Vermeulen M, van der Poll T, Prins JM, Vermeij FH, Roos YB, Kleyweg RP, Kerkhoff H, Brouwer MC, Zwinderman AH, van de Beek D, Nederkoorn PJ; for the PASS investigators.
Lancet. 2015 Jan 19. pii: S0140-6736(14)62456-9. doi: 10.1016/S0140-6736(14)62456-9.

オランダの多施設共同研究。急性期脳卒中患者2538人(介入群1268人、対照群1270人)における検討。セフトリアキソン(ロセフィン)の予防的投与を行っても3ヶ月後の機能予後(mRS)に差はなかった(adjusted common odds ratio 0·95 [95% CI 0·82–1·09], p=0·46)。

過去に抗生剤の予防的投与は脳卒中における感染症発症を抑制するというメタ・アナリシスの結果がありましたが(http://acutestrokecare.blogspot.jp/2012/05/blog-post_20.html)、予後は改善しないという新しいRCTの結果です。少なくともロセフィンの予防的投与は脳卒中の予後改善には寄与しないようです。

2015年1月10日土曜日

脳出血患者に対する深部静脈血栓予防のための抗凝固薬の投与

Is Prophylactic Anticoagulation for Deep Venous Thrombosis Common Practice After Intracerebral Hemorrhage? 


  • Dawn O. Kleindorfer, MD. 
  •   



  • Stroke January 2015

  • アメリカ、32,690人の脳出血における調査。深部静脈血栓(DVT)予防のための抗凝固薬の投与を受けていたのは16.5%だった。抗凝固薬の投与がされていたもののうち44.8%が発症2日以内に投与が開始されていた。使用された薬剤のうち71.1%がヘパリンだった。

    AHAのガイドラインでは脳出血患者に対しては間欠的空気圧迫法か弾性ストッキングを行い、これらに加えて抗凝固薬の投与も考えて良いとなっています。

    日本の脳卒中治療ガイドライン2009にも同様に弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫法によるDVT予防を勧めるとしており、「発症 3 ~ 4 日後に再出血を認めない片麻痺を合併した脳出血例では低用量のヘパリン投与を考慮しても良い」と書いています。

    抗凝固薬投与のエビデンスレベルは必ずしも高くないようで、実際投与すべきかどうか、どっちがイイんでしょうね?

    http://stroke.ahajournals.org/content/early/2015/01/08/STROKEAHA.114.008006

    2015年1月9日金曜日

    Variations in Acute Hospital Stroke Care

    Variations in Acute Hospital Stroke Care and Factors Influencing Adherence to Quality Indicators in 6 European Audits.

  • Peter U. Heuschmann, MD, MPH
  • on behalf of the European Implementation Score Collaboration

  • Stroke December 2014


    ヨーロッパ6カ国(ドイツ、ポーランド、スコットランド、カタロニア、スエーデン、イングランド/ウェールズ/北アイルランド)329,122人における急性期脳卒中ケア。高齢者では血栓溶解療法・抗凝固療法・ストロークユニットでの治療を受けることが少なかった。一方、嚥下障害のスクリーニングを受けることが多かった。
    http://stroke.ahajournals.org/content/early/2014/12/30/STROKEAHA.114.007504

    2015年1月5日月曜日

    ストレス潰瘍予防のPPI_H2ブロッカーより消化管出血・肺炎・CD感染が多い

    Histamine-2 receptor antagonists vs proton pump inhibitors on gastrointestinal tract hemorrhage and infectious complications in the intensive care unit.
    MacLaren R, Reynolds PM, Allen RR.
    JAMA Intern Med. 2014 Apr;174(4):564-74. doi: 10.1001/jamainternmed.2013.14673.

    衝撃!(゜д゜)
    人工呼吸管理をされているICU患者におけるストレス潰瘍予防のためのPPI投与。H2ブロッカーと比較して消化管出血・肺炎・CD感染がPPIで有意に多かった。やはりPPIの乱用には注意しとかないと?(ちなみに、過去の統計的レビュー&メタ解析ではPPIの方が良いという結論、、とはいえ、JAMAの3万例の結果は無視できない、、?)

    http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1830021

    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23318494

    2013年11月3日日曜日

    Carbohydrate counting sliding scale


    平成25年11月1日〜2日盛岡で行われた日本クリニカルパス学会でいいこと教えてもらったので久々の更新です。高血糖の患者さんにはしばしばスライディング・スケールを使ってインスリン投与を行いますが、こっちの方法の方が良いみたいです。簡単に言うと、患者さんの炭水化物摂取量とベースの血糖値から投与するインスリン量を決定する方法です。看護師さんの教育と慣れが必要なようですが、これはかなり使える!って思います。大阪市立大学小児科広瀬正和先生の発表でした。

    2012年7月14日土曜日

    脳卒中患者の胃瘻造設は発症後1ヶ月が経過してから

    When to PEG?
    Nasogastric tube feeding is the preferred method during the first month post-stroke.


    脳卒中はPEGの原疾患として最多のものです。
    (Suzuki Yら、World J Gastroenterol 2010;16:5084-91)




    今回は脳卒中患者におけるPEG(胃瘻)の話題です。


    ASPEN(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition)のガイドラインでは4 週以上の経腸栄養の継続が将来も必要と思われる場合には PEGを行うことが推奨されていますが
    (JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2009;33:122-67)


    では、いつを基準にこの4週を見込むのでしょうか?


    発症(入院)直後? 1週間後? 1ヶ月後?


    オーストラリアNational Stroke FoundationのClinical Guidelines for Stroke Management 2010では、FOOD trialの結果に基づき発症1ヶ月は経鼻経管栄養を継続することを勧めています。

    FOOD trial (Effect of timing and method of enteral tube feeding for dysphagic stroke patients (FOOD): a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2005;365(9461):764-72.) は2005年に発表された多施設国際共同研究で、脳卒中の栄養法に関する有名なランダム化比較試験(RCT)なので御存知の方も多いと思いますが、


    早期(発症1週間以内)PEGが行われた162人と早期にPEGを行わなかった159人が比較され、早期PEGは死亡+予後不良となる危険性を増加させるため勧められないという結論が得られました。


    このRCTの結果を良く見てみると、半年後に補助栄養のためのチューブが残存している割合も早期PEG群で多い(22% vs. 14%, P=0.051)傾向にあるようでした。(Clinical Guidelines for Stroke Management 2010では「最初の1ヶ月経鼻経管栄養を行うと嚥下機能も回復」と書かれていますが、そこまでの効果はどうかな?


    Clinical Guidelines for Stroke Management 2010の有効性は以前に紹介したQASC trialで検証されていますので、


    脳卒中患者の胃瘻造設は少なくとも発症1ヶ月は待ってから行うのが良さそうです。
    ということは、発症1ヶ月の時点で、さらに4週以上の補助栄養が必要と思われる人たちがPEGの候補みたいです。


    ちなみに、アメリカでは「5日間は待つが、明らかにPEGが必要なものについては待つ必要はない」のだそうです(Ken Uchino, Acute Stroke Care. second edition)。EBMの国にして、ことPEGに関してはevidenceは無視なのか?医療事情のせいなのか?医療側の事情で決めるべきことではないのでしょうが、、、