2012年7月14日土曜日

脳卒中患者の胃瘻造設は発症後1ヶ月が経過してから

When to PEG?
Nasogastric tube feeding is the preferred method during the first month post-stroke.


脳卒中はPEGの原疾患として最多のものです。
(Suzuki Yら、World J Gastroenterol 2010;16:5084-91)




今回は脳卒中患者におけるPEG(胃瘻)の話題です。


ASPEN(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition)のガイドラインでは4 週以上の経腸栄養の継続が将来も必要と思われる場合には PEGを行うことが推奨されていますが
(JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2009;33:122-67)


では、いつを基準にこの4週を見込むのでしょうか?


発症(入院)直後? 1週間後? 1ヶ月後?


オーストラリアNational Stroke FoundationのClinical Guidelines for Stroke Management 2010では、FOOD trialの結果に基づき発症1ヶ月は経鼻経管栄養を継続することを勧めています。

FOOD trial (Effect of timing and method of enteral tube feeding for dysphagic stroke patients (FOOD): a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2005;365(9461):764-72.) は2005年に発表された多施設国際共同研究で、脳卒中の栄養法に関する有名なランダム化比較試験(RCT)なので御存知の方も多いと思いますが、


早期(発症1週間以内)PEGが行われた162人と早期にPEGを行わなかった159人が比較され、早期PEGは死亡+予後不良となる危険性を増加させるため勧められないという結論が得られました。


このRCTの結果を良く見てみると、半年後に補助栄養のためのチューブが残存している割合も早期PEG群で多い(22% vs. 14%, P=0.051)傾向にあるようでした。(Clinical Guidelines for Stroke Management 2010では「最初の1ヶ月経鼻経管栄養を行うと嚥下機能も回復」と書かれていますが、そこまでの効果はどうかな?


Clinical Guidelines for Stroke Management 2010の有効性は以前に紹介したQASC trialで検証されていますので、


脳卒中患者の胃瘻造設は少なくとも発症1ヶ月は待ってから行うのが良さそうです。
ということは、発症1ヶ月の時点で、さらに4週以上の補助栄養が必要と思われる人たちがPEGの候補みたいです。


ちなみに、アメリカでは「5日間は待つが、明らかにPEGが必要なものについては待つ必要はない」のだそうです(Ken Uchino, Acute Stroke Care. second edition)。EBMの国にして、ことPEGに関してはevidenceは無視なのか?医療事情のせいなのか?医療側の事情で決めるべきことではないのでしょうが、、、